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熊野古道を歩く #2

 これから歩く約8時間半の道のりを見据え、まずは水を確保する。宿の先の継桜王子には、近畿の名水百選に選ばれた「野中の清水」がある。継桜王子の手前で熊野古道をいったん外れ、3分ほど歩いた小さな湖のような場所に、こんこんと水が湧き出ていた。水量が豊富なことで知られ、古来より旅人の喉を潤してきたのだ。

▲継櫻王子

信仰の道・熊野古道

 熊野本宮大社、熊野速玉大社、熊野那智大社を総称して、熊野三山と呼ぶ。熊野三山をつなぐ信仰の道が、熊野古道である。日本で唯一、信仰の道として世界遺産に認定され、2004年に「紀伊山地の霊場と参詣道」の構成資産として登録された。

 紀伊半島を縦横に走る熊野古道は、紀伊路、中辺路、大辺路、小辺路、伊勢路、大峰奥駆道の6つの道からなる。古の旅人は大阪から紀伊路を南下し、紀伊田辺から中辺路をへて熊野本宮大社を参詣した。道中、熊野九十九王子を参詣しながら険路を歩き、冷水を浴び身を清め、修行を重ねながら聖地へと入ったのである。

 中辺路は、熊野三山へのメインルートとしてもっとも歩かれた。中世には熊野詣でが一大ブームを呼び、皇族から庶民まで「アリの熊野詣」と例えられたほど、多くの旅人が歩いたのである。

▲道休禅門地蔵。途中で行き倒れた巡礼者を供養するためのお地蔵様
▲苔をまとった美しい森をゆく

 草鞋峠の先にある仲人茶屋跡からは迂回路を進む。数年前の台風被害により、本来の道に地滑りの兆候が見られるようだ。この先、岩上峠を越えなければならない。

 近露王子から熊野本宮大社の間には3つの大きな峠越えがあり、岩上峠はもっともきつい。眺望の良い道だが、日差しを遮るものが少ない。額からは汗が吹き出す。

 「ガンバッテ、ガンバッテ!」後ろから追いついたきた外国人カップルに声をかけられ、お互いに励まし合いながら進む。彼らはとても大きなバックパックを背負いながらも、パワフルに登っていった。

 岩上峠を越えてから約1時間。杉木立の森の急勾配を登りきると、三越峠の休憩所に到着である。ひと息つきながら、いろり庵で用意してもらったおにぎり弁当をいただく。紀州の梅おにぎりや鉄火味噌のおにぎりが、疲れた体に優しく染みわたった。

 ちなみに弁当は350円。宿泊費も含めてもう少し値段を上げてもいいと思った客は、きっと僕だけではないだろう。

 熊野古道では「〇〇王子」をよく見聞きするが、王子とは熊野権現の御子神(みこがみ)を祭る神社の総称であり、それらは熊野九十九王子と呼ばれている。

 その中でも発心門王子は格式の高い五体王子のひとつであり、発心門王子から先が、熊野本宮大社の神域とされる。発心門は「悟りの心を開く門」であり、この門をくぐることは旅人にとって大きな意味を持っているのだ。

 発心門王子から先は、熊野古道のハイライトである。水呑王子、伏拝王子のあたりは集落を結ぶ生活道であり、田園風景が広がる。ところどころに設けられた無人販売所では、茶葉のお土産が販売されていた。

▲茶畑の奥に紀伊山脈を望む

 古道を挟んで遠くに望む紀伊山地の山々に想いをめぐらせながらも、ゴールに近づくことに寂しさも感じる。伏拝王子から約1時間。森の中を抜け住宅街に出ると、最後の王子、祓殿王子(はらいどおうじ)に到着だ。熊野本宮大社を参拝するにあたり、最後の禊ぎの場として、道中の汚れを払い落とした場所である。しばしの休憩後、無事に中辺路を歩けたことにホッとしつつ、熊野本宮大社の鳥居をくぐった。

 参拝を済ませ、熊野本宮大社から道路を渡り田んぼの中を進んでゆく。大鳥居が目の前に飛び込んできた。

 熊野本宮大社は、かつて大斎原(おおゆのはら)にあった。熊野の神々が降臨した聖地であり、古の旅人が長い旅路の末にたどり着いたのは、ここ大斎原であったのだ。

 境内には神聖な空気が流れ、緑豊かで心地いい風が吹いている。ここがありふれた史跡ではなく、本物の聖地だということを、風や、緑が知らせてくれるようだった。

 名残惜しさを胸にしまい、本宮大社前バス停へと向かう。

 中辺路歩きを思い出に、バスでぐっすりと眠った。

熊野古道・中辺路(近露王子〜熊野本宮大社)のデータ

Download file: kumano-kodo.gpx
  • 標高:671m(岩上峠)
  • 距離:約23km
  • コースタイム:約8時間30分
  • コース:近露王子→小広峠→岩上峠→三越峠→発心門王子→水呑王子→伏拝王子→熊野本宮大社
  • アクセス:行き・JR新大阪駅⇒(特急くろしお号)⇒JR紀伊田辺駅⇒(龍神バス)⇒近露王子バス停|帰り・本宮大社前⇒(龍神バス)JR紀伊田辺駅⇒(特急くろしお号)⇒JR新大阪駅
  • 参考:龍神バスKUMANO TRAVEL

 中辺路の一般的なコースは、紀伊田辺から滝尻王子までバスで移動し、そこから熊野本宮大社まで歩くものだ。約36km、コースタイム15時間の道のりは、それなりに体力が必要である。そこで路線バスを利用し、妻との二人歩きに適した計画を立てた。

 一日目は移動・観光日だ。紀伊田辺から近露王子までバスで行き、民宿で一泊する。二日目に近露王子から熊野本宮大社までを歩いた。

ひとはめ寿司本舗 宝来寿司

  • 住所:和歌山県田辺市湊18-6
  • TEL:0739-22-0834
  • 定休日:月曜日
  • 営業時間:10:00~21:00

民宿いろり庵

  • 住所:和歌山県田辺市中辺路町野中2007-2
  • TEL:0739-65-0105
  • 料金:1泊2食付き8800円~「ひすいの湯」入浴料こみ
  • 詳細はKUMANO TRAVELを確認
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