初心者のためのハイキング入門|これから山歩きを始める人が準備すべき3つのこと
気分転換にハイキングにでも出かけてみようか——。
日々に追われる忙しい現代人。中には、山を歩いてリフレッシュしたいと考えている人も案外多いのではないだろうか。しかしハイキングとはいえ、山のスポーツである。安全に楽しむためには最低限用意すべきことがあるのだ。
ここではこれからハイキングを始める人が、まず準備すべき3つのことについて解説したい。
目次
- 初めての山を選ぼう
- 最低限の道具と服装を用意しよう
- 山の天候や交通アクセスを調べよう
- 準備を整えたらさっそく出かけるべし
初めての山を選ぼう
ハイキングを始めるにあたって、まず考えるべきことが「どの山に登るか」である。大切なのは自分の体力や力量にあった山を選び、安全に登り、下山してくることだ。そこで初心者におすすめしたいのが、都市近郊の、コースタイム5時間以内の山を選ぶことである。
コースタイム5時間以内|近郊の低山を選ぶ
さて、ハイキングはどのぐらいの運動量なのかご存じだろうか。その答えは「6〜7メッツ」であり、これはジョギングに相当する運動強度である。が、あなたはたとえ1時間でも、ジョギングを続けられますか?
この数字を見て多くの人が「意外とハードな運動なんだな」と感じることと思う。
さらに山の中で万が一トラブルが発生した場合、タクシーや救急車を呼んでエスケープするということができない。だからこそ、初めてのハイキングは何か起きても下山しやすい、コースタイムが5時間以内の山を選びたいのだ。なるべく人が多い都市近郊の人気の山で、登山道がよく整備されたコースが安心だ。
おすすめのハイキングコースは、関東であれば高尾山。関西であれば、六甲山や金剛山あたりが選択肢に入るだろう。以下のようなハイキングガイドを参考に、どの山に登りたいのか検討をつけよう。
- 参考
- 国立健康・栄養研究所身体活動のメッツ表
- 山のリスクマネジメント(山と渓谷社)
最低限の道具と服装を用意しよう
どの山に登るかを決めたら、次は最低限の道具と服装を用意しよう。
ガイド地図とスマートフォンの登山地図アプリは必需品!
ハイキングコースが整備されているような山の場合、たいていひとつの山に対して複数の道があり、それぞれコースタイムや難易度が異なってくる。それらを検討するのに欠かせないのが、ガイド地図や登山地図アプリである。
ガイド地図の代表『山と高原地図』には、登山者に必要な情報が分かりやすく記載されている。ハイキングの計画にぜひ活用したい地図であり、コースタイムの計算に活躍する。
▲これがガイド地図の定番『山と高原地図』
もうひとつは登山地図アプリ。スマートフォンが普及したことにより、登山やハイキングにも必須装備となった。登山地図アプリは計画に活用できるだけでなく、現地でのルート確認にも欠かせない道具だ。登山地図アプリは各社からリリースされており、これは好みで選べば問題ないだろう。
「街に近い簡単なハイキングコースだから」と、決して侮ってはいけない。山岳遭難の原因別1位は道迷いであり、初心者がこれから登る近郊の低山にこそ、道迷いの危険が潜んでいることを忘れてはならないのだ。
その他の道具
- 雨具(上下セパレートのレインウエアがベスト)
- 季節に応じた防寒着
- 水筒(季節によるが、1リットル以上あれば安心)
- 弁当+すぐに食べられるナッツ類などの軽食
- ヘッドライト(トラブルで下山が遅れた場合に備えるため)
- 救急キット(絆創膏や三角巾、常備薬など最低限の物)
- 生活用具(貴重品や保険証、タオルなど)
- これらを収める20Lクラスのバックパック
とくに大切なのが雨具や防寒着である。
山の天気は変わりやすく、天気予報があてにならないこともある。雨でぬれると体温が失われて、最悪の場合は低体温症による命の危険だってあるのだ。レインウエアは晴れでも防寒着として使えるため、必ず装備に加えておきたい。
服装
ハイキングの服装の基本は、なるべく肌の露出を避けることと、重ね着で体温をうまく調整することだ。できれば登山用品ブランドの肌着と、シャツやフリースなどの中間着、アウターの役割をはたす登山用レインウエアを用意し、レイヤリング(重ね着のテクニック)を構築するのがベストである。

とはいえだ。
登山専用の道具やウエアは高価であり、いきなり購入するのは躊躇することもあるだろうし、このページを読んでいる人は、氷に覆われた厳冬期のアルプスに出かけるわけではないだろう(そんな環境、僕だって行ったことがない!)。
まずはすでに所有している動きやすい服装で間に合わせたり、コスパのいいユニクロやワークマンなどの機能性ウエアなどを利用しよう。ハイキングが面白くて続きそうなら、少しずつ専用のウエアや道具をそろえていけばいいのだ。
肌着の素材と防寒着に注意!
ウエア選びのポイントのひとつは、素材に注目すること。とくに肌着には注意し、速乾性のある機能性ウエアを選びたい。雨にぬれると低体温症の危険があると述べたが、これは汗で体が冷えすぎることも、同じ危険があると言える。着心地はいいが水分が乾きにくい綿素材は、ハイキングに適した肌着とは言えないのである。昨今「汗が乾きやすいTシャツ」はどこでも安価で手に入るから、かならず機能性ウエアを着用しよう。
また、山中は都市部より気温が低く、標高が100m上がるごとに気温が0.6度下がる。風が吹けば体感温度はさらに下がる。山に真夏はないと考え、たとえ暑い季節であっても、気温に応じた防寒着を用意したい。
山の天候や交通アクセスを調べよう
出かける山やコースを決め、最低限の道具と服装を準備したら、最後に天気予報と交通アクセスを念入りに調べておこう。
天気予報
雨の山も、それはそれで情緒があっていいのだが、やはりハイキング当日は晴れてほしいものだ。それに雨が降ると同じハイキングコースを歩くにしても、難易度が少し高くなってしまう。
ハイキングの1週間前あたりから天気予報を確認しておき、前日、天候が崩れそうなら日を改めたほうが無難だろう。そのとき「前日17時の予報で、当日の降水確率が50%を超えたら中止する」などと決めておけば、中止の決定やメンバー間での意思共有が簡単にできる。台風や土砂崩れなど災害の可能性がある中でのハイキングなんて、ただただ危険でしかない。
交通アクセス
交通アクセスについてもよく確認しておこう。登山口へのアクセスに、バスや電車を何本も乗り継ぐなんて珍しいことではないし、登山口のバス停に10分おきに便があるなんて稀なことだ。もしかしたら、夏季シーズンの土・日曜しか交通機関が運行していないかもしれない。
注意したいのが帰りの交通である。万が一下山が遅れた場合、帰りの交通に間に合うだろうか? もし時間の余裕がないのなら、出発時刻を早めるなど計画の変更が必要である。
そして、調べた交通アクセスはスマートフォンや手帳に保存しておこう。いざ登山口で乗り換え案内を調べようとしても、その場所が圏外だったらどうにもならない。恥ずかしい話だが、僕は以前それで失敗したことがある。
準備を整えたらさっそく出かけるべし
四方を海に囲まれ、国土の7割が山岳地帯である日本には、3000m級の日本アルプスから近郊の低山まで、登山やハイキングを楽しめるコースがそれこそ”山のように”ある。
総務省統計局によると、登山・ハイキングの行動者数は972万7000人であり、人口の9%の人たちが山を満喫しているという。山の登り方は人それぞれであり、誰かと競うものではない。ハイキングの魅力は十人十色である。
苦労して登った山頂から景色を楽しむ。山ご飯を味わう。下山後の温泉やビールが飲みたくて山に出かける。山が旅行の目的だ——。そのスタイルはさまざまであり、山頂を目指すだけが山の楽しみではないのである。
共通して言えることは、多くのハイカーを魅了してやまない何かがある、ということだ。でなければ僕のように毎週末のようにあっちこっちの山に登るようなことはしない。自然の中に身をおき、自然のペースで歩くことで、得られる何かがあるのは間違いない。
このページを参考に準備ができたら、経験者に同行させてもらったり、家族や友人を誘ったりして、さっそくハイキングに出かけてみるといい。ひとりが不安であれば、山岳会(僕が所属する大阪青雲会はこちら)に入会するのもおすすめだ。
スマートフォンを片手に調べ物をしているだけでは何も始まらないし「全ての道具と知識と技術が完璧にそろう日」なんて永遠に訪れない。思い立ったが吉日。一歩踏み出した先には、大勢のハイカーをとりこにする素晴らしい世界が広がっているのである。