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日本最強の城【高取城】ハイキングコースを歩く

 高取城はかつて、奈良県高取町、高取山山頂(標高583.9m)に築かれた山城だ。日本最強の城として名高く、岡山県の備中松山城、岐阜県の美濃岩村城に並ぶ、日本三大山城のひとつである。

日本三大山城のひとつ高取城

 城内周囲は約3km、城を形成する全範囲の周囲は実に約30kmにも及ぶ。何と広いことか! 麓から天守台までの高低差は390mと日本三大山城の中でもっとも比高が高く、まさに「日本一の山城」と呼ぶにふさわしい規模を誇るのだ。どうだろう、興味がわいてきただろうか。

 明治4(1871)年に廃藩置県が布かれ廃城となった高取城は、現在は緑に覆われた石垣を留めるのみである。しかしながら本丸や二の丸跡の立派な石垣からは、かつての繁栄ぶりを想像できる。昭和28(1953)年に国の史跡、平成18(2006)年には日本100名城に認定され、現在はハイキングコースが整備されているのだ。さっそく歩いてみよう。

土佐街道とくすりの町

高取城 土佐街道

 朝10時に近鉄「壺阪山」駅をスタートし、土佐街道をゆく。高取藩2万5000石の城下町として栄えた、高取町のメインストリートだ。趣のある家屋が立ち並び、その町並みはまるで往時にタイムスリップしたかのようである。

 高取町は「くすりの町」としても知られている。日本書紀に記された西暦612年、推古天皇が波多(現在の高取町羽内付近)で聖徳太子らを率い、薬狩りをしたという記述から歴史が始まったという。高取町は豊かな自然に恵まれ、薬のもとになる植物が豊富だったのだろう。街道の石畳には所々、薬草タイルが埋められており、通りには漢方薬品店や製薬会社が軒を連ねている。

▲高取町はひな人形でも有名らしい
高取城 黒門跡
▲高取城第一門跡
▲上子島砂防公園。このあたりから雪がちらついてきた
▲整備された歩きやすい登山道

 土佐街道の先、上子島砂防公園でしばし休憩し、宗泉寺への分岐を過ぎるとここからが本格的な登山道だ。といっても道は整備されており、ベンチや案内板が適所に備えられた入門レベルのコースである。雪がぱらつく中、吐く息は白い。冬の朝の、凜とした空気が気持ちいい。七曲がり、一升坂を登り、猿石に到着した。

指定文化財「猿石」

高取城 猿石

 指定文化財である猿石は高取城二の門の手前に備えられ、飛鳥時代の代物と考えられている。台座は同時代の古墳の石材と見られ、猿石は城内と郭内の境界を示す結界石とされているのだそうだ。この先、二の門跡を通過し、いよいよ城内へと入ってゆく。

高取城天守台

高取城
▲高取城天守の石垣

 苔むした大きな石垣をいくつか通り抜けると、パッと視界が広がった。3km四方の城内はさすがに広い。そして本丸の石垣の巨大なこと。この上に建っていた三層の天守閣は、まさに最強の山城と呼ぶにふさわしい、威風堂々たるものだったであろう。

 本丸の石垣からは360度の絶景が望める……というわけでは、残念ながらない。樹林に遮られて展望はその隙間から所々に開けている程度だ。

 が、それも当然のこと。もし樹林がなければ城は風雨の影響を直接受けてしまうのだから。それでも展望盤には、南に吉野山や大峰山、北に生駒、そして東には富士山の名が刻まれている。この日は曇り空だったが、条件が良ければきっと富士山を望めるのであろう。

 天守に居を構えた歴代の大名たちは、城下町の様子や遙か彼方の山々を毎日のように望んでいたのだろうか。しかし藩を治め、権力の中心であった高取城も、時代の流れには逆らえず、現在は苔むした遺構を残すのみだ。

 ——諸行無常とはこのことか。たとえ栄華を極めたとしても所詮全ては流れ移ろうもので、この世の中に未来永劫変わらないものなど何ひとつ無いのである。

 本丸の広場で昼食を済ませ、壺阪寺方面へと向かう。本丸から壺坂口門へと戻り、そこから進路を東へ。NTTの電波塔を経て五百羅漢へ到着だ。

五百羅漢

高取城 五百羅漢
▲岩に彫刻された仏像。この他に、この場所には数百体の仏像が鎮座する

 ここは壺阪寺の奥ノ院にあたる。お堂などは残されていないが、五百羅漢両界曼荼羅の石仏像があり、その佇まいは幽玄の世界に誘われるようだった。

 五百羅漢から壺阪寺へと向かう。本来は壺阪寺の境内から吉備川沿いの登山道を歩くのだが、壺阪寺の参拝をパスして車道を歩いた。登山道を歩いてもどうせ車道に合流するし、交通量はわずかで危険は感じない。車道を進み、高取土佐郵便局前の交差点で再び土佐街道に合流し、壺阪山駅から帰路についた。

高取城のデータ

Download file: takatorijo.gpx
  • 標高:583.9m
  • 距離:約11km
  • コースタイム:約4時間
  • コース:壺阪山駅→上子島砂防公園→猿石→高取城址→五百羅漢→壺阪寺→高取土佐郵便局→壺阪山駅
  • アクセス:近鉄吉野線「壺阪山」駅下車、高取城址まで徒歩約2時間。パンフレットや観光マップは高取町観光ガイドを確認