【六甲全山縦走】市ケ原〜宝塚までの後半コースガイド
関西近郊のハイカーにとって、六甲全山縦走路の踏破は大きな目標のひとつだろう。だが公称56kmにおよぶ道のりは厳しく、その累積標高差は2,500mを超える。一日での踏破も可能だが、初心者にとっては難しい。
そこでおすすめしたいのが、全山縦走路を2分割で歩くことだ。ここでは六甲全山縦走路の後半コースをご紹介。なお前半コースは「【六甲全山縦走】須磨浦公園〜新神戸までの前半コースガイド」を参考に。
目次
- 六甲全山縦走・後半コースの概要
- 補給・エスケープポイント
- 六甲全山縦走の装備・服装
- 六甲全山縦走ガイド|後半
- 下山後の立ち寄り湯:ナチュールスパ宝塚
六甲全山縦走・後半コースの概要
- 標高:931m(六甲山最高峰)
- 距離:約25km
- コースタイム:約10時間
- コース:新神戸駅→市ケ原→摩耶山→記念碑台→六甲ガーデンテラス→六甲山最高峰→東六甲縦走路→宝塚ゆめ広場
- アクセス:行き・神戸市営地下鉄・JR「新神戸駅」下車すぐ登山口|帰り・宝塚ゆめ広場から阪急「宝塚駅」、あるいはJR「宝塚駅」へ
六甲山は、西は神戸市須磨区から東は宝塚へと連なる山域の総称のことでだ。日本の近代登山発祥の地とされ、黎明期には小説『孤高の人』のモデルになった加藤文太郎らが、高みを目指してトレーニングを積んだ場所である。
須磨から宝塚には公称56kmにおよぶ全山縦走路が走っており、2分割した場合は、市ケ原が中間地点となる。後半コースには最難関とされる摩耶山への登りが含まれる。その標高差500mの急坂は、須磨から縦走してきた体に大きな負担となるだろう。
摩耶山を登り終えても、六甲山最高峰までは登り基調の道のりが続く。そのため前半コース同様に、万が一の疲労や故障に備えてエスケープルートを確認しておこう。
補給・エスケープポイント
六甲山上の半分は観光地として開発されている。公共交通機関が整備されており、エスケープに便利だ。
- 摩耶山:まやビューライン(ロープウェイ・ケーブル)
- 摩耶山から記念碑台の間:阪急バス
- 記念碑台から南に徒歩約20分:六甲ケーブル山上駅
- 六甲ガーデンテラス:六甲有馬ロープウェイ
コース上には自動販売機が点在するほか、カフェや商店もいくつかある。
CAFE 702と六甲ガーデンテラス、一軒茶屋では食事が、藤原商店ではドリンクの補給や軽食を購入できる。装備をなるべく軽量化し、補給ポイントを積極的に利用しよう。
六甲全山縦走の装備・服装
水や食料の補給は途中でできるとしても、日帰り登山の基本装備は確実に用意しておきたい。
- 軽登山靴
- 季節に応じた防寒着
- レインウエア
- 軽アイゼンまたはチェーンスパイク(冬季)
- 地図とコンパス、またはスマホの登山地図アプリ
- ヘッドランプと予備電池
- スマートフォン
- モバイルバッテリー
- 救急用品
- 飲料水
- 行動食・昼食・非常食
気を付けたいのが雪の対処だ。冬季の六甲山は低山ながら積雪に見舞われ、登山道が凍結することもある。状況によっては軽アイゼンやチェーンスパイクが必要になるのだ。
また、六甲山最高峰は麓との標高差が約1,000mある。街中での季節感が通用しないことを認識し、季節に応じた防寒着を用意しておこう。
六甲全山縦走ガイド|後半
市ケ原〜摩耶山

後半コースは市ケ原から始まる。新神戸駅をスタートして、まずは市ケ原へ向かおう。布引の滝や布引貯水池を経て、約1時間で到着する。トイレや自動販売機が設置されているので小休憩に最適だ。


市ケ原を出発すると、「稲妻坂」と「天狗道」を経て、山上の掬星台(きくせいだい)を目指す。その名前からしていかにも険しそうな道だが、実際に六甲全山縦走路の最難関とされている。標高差約500mの長い急坂が続くのだ。小休憩をはさみながら確実に登っていこう。

天狗道を登り終えたところが摩耶山「掬星台」である。ここは日本三大夜景のひとつであり、見事な眺望を楽しめる。急登での疲労も、この景色を目にすれば吹き飛ぶに違いない。掬星台には CAFE 702 や摩耶ビューラインがあり、休憩やエスケープに最適だ。
摩耶山〜六甲ガーデンテラス
摩耶山を出発すると舗装路まじりの縦走路が始まる。オテル・ド・摩耶や摩耶山天上寺を通過し、六甲ガーデンテラスへと向かう。
舗装路は歩きやすいが、小さなアップダウンが連続するところもある。最難関の摩耶山をクリアしたとはいえ、まだまだ油断できない。また、舗装路と登山道の分岐を見失わないように注意したい。



丁字ヶ辻の交差点を過ぎ、しばらく歩くと藤原商店がある。ここはドリンクやカップ麺の他、季節のフルーツなんかも販売される縦走路のオアシスだ。お湯をもらって、カップ麺をいただくこともできる。補給や休憩をかねてぜひ立ち寄ってみよう。

舗装された縦走路をどんどん東へと向かう。記念碑台を通過し、日本最古のゴルフ場、神戸ゴルフ倶楽部の敷地を抜け、ほどなくすると六甲ガーデンテラスへと到着である。

六甲ガーデンテラスは山上の観光スポットだ。六甲枝垂れや六甲山ジンギスカンパレスなど、神戸を代表する名所が立ち並ぶ。展望台からの眺めも掬星台に負けず劣らず。余力があれば観光も楽しみたいところだ。

なお、公共交通機関でのエスケープができるのは、六甲ガーデンテラスが最後である。この先の踏破が難しそうな場合は、バスやロープウェイで下山しよう。
六甲山最高峰
六甲ガーデンテラスを出発し、六甲山最高峰へと向かう。標高はすでに800mを越えており、麓とはずいぶん気候が違う。夏は涼しいが冬季は積雪の可能性もある。
六甲ガーデンテラスから先、正規の縦走路は登山道であるが、車道も走っている。登山道は小さなアップダウンを繰り返すだけで、僕としては面白みに欠ける。好みにより車道を選ぶのもひとつだ。

縦走路を東へ進み、じわじわと高度を稼いでゆく。車道を横ぎり、最後の急坂を登りきると六甲山最高峰に到着である。

標高は931m。360度に近い展望が広がる。最高峰直下には一軒茶屋もあり、補給もできる。この先、東六甲縦走路へと入るが、宝塚までの十数キロの道のりに補給ポイントはない。ここで準備を整えておこう。
もしエスケープする場合は、魚屋道(ととやみち)を有馬温泉方面に下山するのがおすすめだ。
東六甲縦走路
六甲山最高峰を通過し、残すは東六甲縦走路の踏破である。残り十数キロ、最後の頑張りどころだ。鉢巻山トンネルを通過し、道路の脇から東六甲縦走路へと入る。

東六甲縦走路の序盤はやや荒れた道が続くが、次第に歩きやすくなる。ただ須磨から歩き通す場合は、この時点で日暮れを迎えていることだろう。ヘッドライトの用意を忘れずに。

大平山、大谷乗越を越え、登山道の終点である塩尾寺を目指す。途中に舗装路歩きも含むため、登山道への入り口を見逃さないように注意しよう。

ちなみに、道標には番号が振られており、塩尾寺は36番である。だんだんと積み重なる数字を励みに進む。
砂山権現(神社)を通り過ぎ、最後の階段を下りると塩尾寺に到着だ。ひとまず登山道はこれで終わりとなる……が、ゴールはまだ数キロ先の、宝塚ゆめ広場だ。
ここから長い舗装路を下ってゆく。この坂道がなかなか急で、全山縦走で疲労した足に容赦なく追い討ちをかけてくる。

宝塚の街中に下りたところに「ナチュールスパ宝塚」があるので、ぜひ立ち寄って汗を流そう。ナチュールスパ宝塚から武庫川を渡ると、ついにゴールの宝塚ゆめ広場である。

全山縦走ハイクの場合は、須磨から12時間〜15時間、トレイルランの場合は8時間程度だろうか。タイムは個人の能力に左右されるが、いずれも長丁場であることに違いはない。達成感に包まれながら帰ろう。お疲れさまでした。
下山後の立ち寄り湯:ナチュールスパ宝塚

ゴール目前にナチュールスパ宝塚がある。館内は美しく気持ちよく利用でき、金宝泉、銀宝泉を楽しめる。疲労回復や筋肉痛改善の効能があるとされ、六甲全山縦走後の立ち寄り湯にはぴったりだ。
- 料金:男性840円 女性1040円
- 営業時間:平日9:30~22:00 土日祝9:30~21:00
- 休館日:毎週木曜日
- ナチュールスパ宝塚公式サイト
公称56kmにおよぶ道のりも2分割、あるいは3分割で挑戦すると踏破しやすい。それでも険しい道のりには違いないから、十分な準備をしてから挑もう。この記事が、六甲全山縦走への挑戦に少しでも役立ちますように——。