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シェラカップと固形燃料で組むミニマルな湯沸かしセット|ホワイトベアのメタ缶

 アウトドアにおいて固形燃料は長らく緊急時用という位置づけだった。

 ガスやガソリンバーナーと比べて火力が弱く、耐風性に難があることが理由のひとつ。しかしながら不具合を起こす可能性がゼロではない各種バーナーと違い、固形燃料は故障しない。軽く小さく携帯が苦にならない。だからこそ緊急時の予備バーナーとして重宝されているのだ。

 確かに、最新鋭のガスバーナーは大変使い勝手がよい。湯沸かしから調理まで難なくこなす性能は、まるで家庭用ガスコンロをそのままフィールドに持ち込んだように便利だ。しかし、半日もしくはワンデイハイク程度の行程で、調理をせずに温かいお湯を沸かせればいいのなら、ガスバーナーはオーバーではないか。そこで固形燃料、いわゆるメタ缶の登場である。

ホワイトベアの固形燃料

ホワイトベア メタ缶

 ホワイトベア「ケイネン160」。

 山を楽しむ人なら一度は見たことがあるだろう。アウトドアショップの片隅にひっそりと陳列されている姿を目にする度に、僕は気になっていた。使い心地は実際どうなのだろうと。一度気になりだすと妄想が止まらない。一日の終わりにメタ缶とカップをさっと取り出し、サラミとクラッカーをつまみながらお湯を沸かす。空を見上げると片雲の風に誘われて、漂白の思いやまず、道祖神のまねきにあいて取るもの手につかず、月日は百代の過客にして行きかう年もまた……嘘ですごめんなさい。まぁ600円だしね。試してみよう。

 ホワイトベアのメタ缶「ケイネン」は、メタノールをロウソク状にして缶に詰めたものだ。ようするに旅館の食事で個人用の鍋を温める小さな燃料の、アウトドアバージョンである。燃料を詰めた缶にはクッカーを載せられる風防兼ゴトクがセットされ、これひとつ持ち出せばフィールドで温かいお湯が得られる。

蓋をコインやナイフで開けると燃料がぎっしり詰まっている。ここにマッチで火をつける
ゴトクがセットされているから、他になにもいらない。ケイネン160はシェラカップやマグカップがちょうど載せられるサイズだ

コンパクトだが、十分な火力

 火力は想像以上に強い。

 公式サイトによると、「ケイネン160」では500mlのお湯を約8分(ひとまわり大きいケイネン400では6分)で沸騰させ、燃焼時間は1時間。3合の米を約3回炊飯できるとある。実際にお湯を沸かしてみると、300mlのお湯を4分ちょっとで沸かせた。これは使える。陸上自衛隊に納入されているのも納得だ。

 ホワイトベアの固形燃料は、点火後に誤って倒してしまっても燃料がこぼれない。これが液体のアルコールバーナーだと大惨事になりかねない。山を歩き回って体力が落ちると注意力も散漫になりがちだから、燃料がこぼれない安心感は大きい。

ひとり分のお湯の調達なら十分に使える

 固形燃料といえばエスビットポケットストーブも有名だ。いやむしろ、固形燃料といえばエスビットを思い浮かべる人が多数かもしれない。僕も非常用装備に加えている。エスビットも各国の軍隊に採用されているだけあり、性能はお墨付き。密閉しなくても気化せず、湿気に強く火力も十分で、ひとつ約4gに小分けされたタブレットは、燃料計算が簡単だ。

 ただ難点がある。煤が大量に発生することと、独特の悪臭を放つことだ。エスビットを常用するハイカーにとってはその悪臭も山の醍醐味のひとつかもしれないが、僕はちょっと苦手である。その点ホワイトベアのメタ缶は悪臭も煤も発生しないのがいい。

ホワイトベア メタ缶
消火はゴトクを外し、蓋を裏向けにかぶせる。革手袋があったほうがいいかもしれない
シェラカップの中にメタ缶、防水マッチ、折りたたみスポークがおさまる

 僕の山のメインバーナーは「プリムス 2243」と「ジェットボイル」であることに変わりはない。しかし、食事をより簡素にシンプルにする山行や、お茶休憩のためのお湯を沸かすだけであれば、メタ缶をシェラカップにスタッキングし、このセットひとつを持ち出したい。小さくて軽いし、なにせ面倒がなくていい。そうして一日の終わりにお湯を沸かしながら空を見上げ、片雲の風に誘われて漂白の思いやまず、道祖神のまねきにあいて……。今日はここまでです。