instagram

さんふらわあで行く、別府温泉、鶴見岳、現地ゼロ泊!弾丸フェリーの旅 #2

 翌朝、ほんのりと明るくなった空を展望デッキから眺めていた。

 日の出時刻が迫り、太陽が顔をのぞかせようとしている。デッキには冷たい風が吹きすさび、ときおりフェリーの排ガスが風に乗って鼻を刺激した。じきに、別府国際観光港へ着岸する。

 地図を見ると別府市は、別府湾と由布・鶴見山郡に囲まれた都市であることが分かる。それも鶴見岳は活火山であり、気象庁の観測対象だ。

 別府市は明治以降、交通の発達や温泉掘削技術の進歩、さらに経済の発展により、温泉都市として発展した。現在、別府温泉を訪れ宿泊する人は年間400万人を超えるという。市内には路線バスが走り、交通の便もいい。各地へのアクセスが容易であり、弾丸フェリープランの限られた時間で、山と温泉を堪能するのに別府は最適な街であるのだ。

 別府国際観光からバスに乗り、JR別府駅へ到着した。そこで亀の井バス・由布院線に乗り換え、鶴見岳の登山口へと向かった。

 登山口には御岳権現社の大きな鳥居があり、その堂々とした姿が秋晴れの空によく映えている。その脇には登山者への注意喚起の看板があり、鶴見岳が活火山であることを改めて認識した。

 鶴見岳の標高は1,375mだ。その標高差を海抜0mから登る「一気登山道」もあり、4月にはその登山道で大会が開かれる。

 しかし、今回の登山口の標高はすでに590mあり、ゆっくり歩いても約2時間で登頂できた。登山道は落ち葉で踏み跡が分かりにくかったが、さして難しいコースではない。しかし手軽なハイキングコースながら、その山頂からの景色は想像以上だったわけだ。

 ロープウェイの麓、別府高原駅から再び路線バスに乗り込む。次なる目的地は鉄輪温泉だ。ハイキングの汗を流した後の、温泉たまごとビールが楽しみである。別府ロープウェイから由布院線を霊泉寺で乗り換え、外回り循環線で鉄輪へと向かった。

 さて、鶴見岳の登山道とバスの乗り継ぎは念入りに調べていたが、鉄輪温泉については下調べをしていない。温泉街は山と違って観光地だから、行けばなんとかなるだろう。僕の旅のクオリティーはいつもこんなものである。

 鉄輪温泉に到着し、地図と案内看板の交互に目を走らせる。すると路線バスのガイドとおぼしき男性が声をかけてくれた。

「ご案内、しましょうか」

 七三分けにきっちとセットされた頭髪と、紺色の背広。プレスの利いたパンツ。それに、物腰の柔らかさに僕は好感を持った。年齢は50代ぐらいだろうか。

 が、僕の質問に一瞬だけ戸惑ったようだ。

「温泉に入りたいんです——」

 なにせ大分は温泉県であり、別府はその中心地だ。湯けむりがいたるところから立ち上り、温泉は売るほどあるのである。

 それでも僕の気持ちをくみ取ってくれた男性は、親切に対応してくれた。

「一番有名な温泉はひょうたん温泉ですね。設備はスーパー銭湯のように整っていて、色々なお風呂が楽しめますよ」

 右も左も分からない僕はそのひと言でひょうたん温泉に決めた。道順を丁寧に教わり、鼻歌まじりに温泉へと向かったのだった。

▲写真のような湯煙が、本当にいたるところから湧き上がっている
▲温泉卵は外せない

 鉄輪温泉街は何と言っても湯けむりが印象的だ。街にはいくつもの温泉や、地熱を利用して食材を調理する蒸し工房がある。それぞれの煙突からもくもくとけむりが漂っており、道路の側溝からでさえも蒸気が立ち込めているぐらいだ。

 鉄輪温泉は別府八湯に数えられ、特に蒸気を利用した蒸湯が有名である。別府では温泉の噴出口を「地獄」と呼び、海地獄、白池地獄などの景勝地を巡るのが、別府観光の名物だ。ひょうたん温泉でひとっ風呂あび、思惑どおりに温泉たまごとビールを味わった。さて、次は地獄を巡ろうかと温泉街をほろ酔い気分で歩き出す。

 が、白池地獄の入り口で立ち止まってしまった。

 「なんだ、有料じゃないか」僕はてっきり、開放された公園のような場所に地獄があり、自由に見学できるものと思っていたのだ。

 だが実際には、別府の地獄は国の名勝に指定され管理されている。管理費がいるのは当然のことで、入場料は躊躇するような額ではないし、わざわざ大阪から別府を訪れて地獄を見学しない手はない。が、僕はこう考えるひねくれものである。

 ——まぁ、どうせ中はガイドブックの写真と変わらないのだろう。

 地獄巡りをすぱっと切り捨て、ビール片手に再び温泉街を散策し、別府国際観光港行きのバスを待つことにした。

 有名観光地を巡る旅も、それはそれで楽しいものだ。観光地を効率よく巡り、その写真の反応をSNSでもらいたい——。だがそんなことより、例えば路線バスの男性ガイドから受けた親切のほうが、僕にとってはよほど大切な旅土産であるのであった。

 17時45分の乗船開始時刻が迫り、ターミナルの待合室に、徐々に乗客が集まってきた。フェリーの船体は夕陽に照らされ、オレンジ色に染まっている。ターミナルから望める鶴見岳は手が届きそうなくらい近い。改めて海、街、山の近さを感じる。

 翌朝、目覚めると大阪南港は快晴だった。この日は各地で今季一番の冷え込みを記録した。潮の香りを運ぶ冷たい風は、汗を吹き出した真夏を遠い昔のように感じさせる。冬の足音が、すぐそこに迫っていた。

フェリーさんふらわ旅のデータ

大阪⇔別府航路

  • 【大阪発別府行き(下り)】
  • 日〜木曜:19:05 発・翌朝 06:55 着
  • 金・土曜:19:55 発・翌朝 07:45 着
  • 【別府発大阪行き(上り)】
  • 日〜木曜:18:45 発・翌朝 06:35 着
  • 金・土曜:19:35 発・翌朝 07:35 着

詳細はフェリーさんふらわあ公式サイトを確認。

鶴見岳

Download file: turumidake.gpx
  • 標高:1374.6m
  • 距離:約3km(片道)
  • コースタイム:約1時間40分(片道)
  • コース:JR別府駅⇒亀の井バス(30分)⇒鳥居→御岳権現社→鶴見岳
  • アクセス:JR別府駅から亀の井バスで、鳥居まで約30分
  • 備考:鶴見岳から別府ロープウェイで高原まで、約10分

鉄輪温泉

  • 鶴見岳下山後のアクセス:別府ロープウェイ⇒亀の井バス⇒霊泉寺(乗り換え)⇒亀の井バス外回り循環線⇒鉄輪温泉
  • 【ひょうたん温泉】
  • 住所:〒874-0042 大分県別府市鉄輪 159-2
  • 電話番号:0977-66-0527
  • 営業時間:AM9:00〜AM1:00(年中無休)
  • 公式サイト:https://www.hyotan-onsen.com/index.html
created by Rinker
¥792 (2022/05/28 23:07:13時点 Amazon調べ-詳細)
created by Rinker
¥1,620 (2022/05/28 23:07:14時点 Amazon調べ-詳細)