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【京都一周トレイル】美しい渓谷を歩き、清滝から上ノ水峠へ

 目の前に広がる景色に思わずため息がもれた。

 今僕は、京都一周トレイルを清滝からスタートし、高雄へと歩いている。清滝川が創り出した自然の造形が、これほどまでに美しいとは——。

 世界に誇る日本の渓谷といえば、鹿児島県・屋久島の「白谷雲水峡」がその代表格といっても異論はないだろう。2018年に訪れたとき、白谷雲水峡の入山口に立つと、「我が名はアシタカ!」と思わず叫びたくなるような絶景が広がっていたのを思い出す。

 だがここも負けてはいない。

清滝「錦雲渓」から美しい京都一周トレイルを歩く

 清滝川沿いに整備されたトレイル周辺は「錦雲渓」と呼ばれ、紅葉や新緑の色濃い緑がハイカーを楽しませてくれる。山中には神護寺や西明寺、高山寺など古刹があり、京都の風景を楽しめる。

「自然を享受するためには、飛行機を乗り継いで世界遺産を訪れなくてはならない」、もしこう考えているとしたら、それは気がついていないだけだ。身近にある、日本の里山は美しい。

 京都市をぐるりと囲う山々をつなぐ、トレイルがある。

 京都一周トレイルは、京都の東南・伏見桃山から比叡山、大原、鞍馬へと続き、高雄、嵐山、苔寺へと至る。全長約83km(京北コースの約48kmは除く)のコースは緑豊かな田園風景や清流、森の中を進む。京都市内からのアクセスが抜群で、旅館やゲストハウスを利用しながらの踏破や、パートをいくつかに分けた分割ハイキングも容易だ。

 今回僕は、ある目的のために歩いている。それは「タープ泊を経験してみよう」というものだ。もしタープが幕営具の選択肢に入るなら、装備をよりシンプルにできるし、経験すれば万が一のビバーク時にも落ち着いて対処できるようになるだろう。

 ツエルトやテントでの宿泊経験はあるが、タープは初めて。そこで何かあったときにすぐ下山できるコースをとった。清滝をスタートし、高雄、沢ノ池へと歩きここで一泊。翌日は上ノ水峠から東海自然歩道を千束へと歩き、下山する超お手軽コースだ。

阪急嵐山駅からバスで清滝へ向かう

 清滝沿いのトレイル歩くと、やがて杉の人工林を通過し、神護寺へと至る。古くは高雄寺・高雄山寺と呼ばれ、平安時代以前から山岳信仰の拠点であったという。神護寺周辺は「高雄観光ホテル」や川床料理店が並び、にぎやかな雰囲気だ。

 神護寺を通過し、トレイルを福ヶ谷林道へと進んでゆく。舗装された林道の急坂が地味にこたえるが、トレイル案内図のある道標85番まで歩き、登山道を稜線まで登ればじきに仏栗峠、沢ノ池に到着だ。本日の幕営地を品定めし、決めた場所で昼食をとる。

沢ノ池

設営は簡単、快適に過ごせるタープ泊

 先述のとおりタープ泊は初めてだ。あれこれ準備に手間取るだろうからと早めに宿泊地に着いたのだが、タープの設営って、とっても簡単なんですね。僕のタープは「DDタープの3×3」、これを三角張り(ダイヤモンドフライ)に設営してみた。

 立木を支点にロープをかけ、ペグを3本打ってピンと張る。以上。10分もかからなかった。どうする、夕飯までの時間……。マットの上に寝転んで本を読んだり、何をするわけでもなくぼんやりと湖面を眺めたり。日が暮れてきたら夕飯をとり、さっさと寝てしまった。

 タープはテントと違って空間が完全には仕切られていない。いろいろ不安要素があった。夜中に鹿の鳴き声や足音にびくついたり、朝目覚めるとグランドシートの上にコオロギが跳ねていたりはしたが、夜が明けてみれば、それらはたいした問題ではなかった。野外で一晩を過ごすのに必要なのは、要するに雨風を防ぎ、体温を守れる防水の布であることを確認できたのだ。

 荒天にも耐えうる耐候性では山岳テントに、軽さはツエルトにかなわないが、タープの有効面積の広さと開放感、設営・撤収の容易さと汎用性の高さは魅力的だ。好天が約束された樹林帯の中なら、積極的にタープを使いたいと思う。

ペグ数本と細引き、それにグランドシートがあれば、さまざまな設営ができる
DDタープ
定番のダイアモンドフライ。中は広く快適

 それにしても、沢ノ池周辺は後始末がされていないBBQの炭・金網の放置やタバコの吸い殻、その他のゴミが目立つ。沢ノ池までのトレイルには、「私有地につき、トレイル以外立ち入り禁止」の看板がいくつか設置されていた。野営地として土地の所有者が沢ノ池の利用を黙認しているのが現状だろう。

 しかしゴミが散見されるようでは、何かしらの規制がかかるのも時間の問題ではないだろうか。所有者の方に使わせてもらっていることを忘れてはならない。ゴミのおかげで、沢ノ池が秘境にはとても思えなかったのが残念だ。

 翌朝は7時30分に出発し、上ノ水峠に向かう。ここから京都一周トレイルを二ノ瀬まで歩いてもよかったのだが、「タープ泊を経験する」という目的が達成できたから、上ノ水峠から東海自然歩道を経て千束に下山することにした。

 道中の水場で顔を洗い、ぬらした手ぬぐいで汗を拭って生き返った。日本は蛇口をひねると安全な飲み水が手に入る世界でも特に恵まれた国だ。日常では、水は“タダでいくらでも手に入る”と勘違いしてしまいがちだが、衣食住をバックパックに背負う歩き旅では、水は貴重であり、水場のありがたさが心にしみる。

 僕のような男は、時々このように自然のありがたさを体験し、自然に生かされていることを思い出したほうがいいのである。

 水場から千束までの道すがら、お地蔵様を祭った小さなお堂があった。「ありがとうございます」と、手を合わせて帰路についた。

京都一周トレイル、北山コースのデータ

Download file: kiyotaki_sawanoike.gpx
  • 距離:約11.5km
  • コースタイム:約3時間30分
  • コース:清滝→神護寺→福ヶ谷林道→仏栗峠→沢ノ池→上ノ水峠→千束 
  • アクセス・行き:阪急嵐山駅から京都バス「清滝行き」乗車、清滝下車
  • アクセス・帰り:千束から徒歩約10分で京都市バス「鷹峯源光庵前」へ

 京都一周トレイルには大変親切な道標が設置され、地図がなくても歩けてしまうほどだ。とはいうものの、万が一のためにやはり地図は用意しておきたい。地形図や山と高原地図もいいけれど、おすすめは京都一周トレイル会による公式マップだ。道標に割り振られた番号により現在地を簡単に確認できるほか、観光案内も充実している。京都一周トレイルを歩く人の必携品といえるだろう。

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