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ヤマレコで、迷いやすい場所を簡単にチェックする方法

 ——おかしい。

 本当に、このルートで合っているのだろうか。やけに踏み跡は薄いし、なんだかヤブが濃い気がする。それに、最後に標識を見てから随分と歩いたが、次の標識はまだか。いや、もしかしてこれは——。

 戻るべきだ。

 しかし「迷った」なんて恥ずかしくて他のメンバーには言えない。このまま進めば、きっと登山道に合流するだろう——と、足を進めた次の瞬間、あっ、と喉から声が飛び出し、目の前の景色が刹那のうちにめまぐるしく流れてゆく。世界ミドル級チャンピオンの、右ストレートをくらったような衝撃——左フック——。あれ、地面はどこだ。空は? 頭上から降り注ぐ悲鳴。体が、動かない。

 ——そうか、落ちたのか。下草に隠れた崖にやられたのだ——。

 というのは僕の想像の話だが、道迷いを発端に、こんなことが実際に起こらないとも限らない。

山の遭難は「道迷い」が飛び抜けて多い

 スマートフォンの山地図アプリでルートや現在地を確認できるのに、道迷いが未だに遭難原因No.1だなんて、いったいどうしたことだろう。警察庁による「令和2年における山岳遭難の概況」によると、遭難者数2,697人のうち1,186人、44.0%もの人が道迷いにより遭難したのだ。

 そして道迷い遭難は、高く険しい山より身近な低山でこそ発生しやすい。準備を怠ると、恐ろしい目に遭うことがあるから侮れない。

道迷いは下りで多発

 山頂で景色やランチを満喫したし、さぁ下ろうか——という頃合いが、もっとも危ない。

 ハイキングや一般登山で尾根道を登る場合、尾根は山頂に向かってひとつに集約されてゆく。

 が、下りの尾根はその反対にいくつにも枝分かれしてゆくのだ。枝分かれの数だけルート選択を迫られる。それも、昼食をとったばかりの、ぼんやりとした脳みそで。

 尾根道を下るだけならまだいい。もし、登山道が尾根から外れた場所にあったなら。それに気づかず、尾根に入り込み道に迷うのは典型的な遭難例である。

ヤマレコ「みんなの足跡」をチェックしよう

 道迷いを防ぐには、事前に地図をチェックし、迷いそうな場所の目星を付けて心構えをしておくことが大切だ。しかし、等高線が入り組んだ地形図を判読するのは初心者にとっては難しい。そこで活用したいのが、ヤマレコの「みんなの足跡」機能である。

 ヤマレコの地図が他と違うのは、一般登山道の他にユーザーのGPS軌跡を「みんなの足跡」として表示している点だ。

 オレンジ色の線で表記される足跡は、太ければ太いほど人気が高く大勢の人が訪れるルート。逆に細いルートは、バリエーションルートのように入山者が少ないルートだ。この足跡を事前にチェックすることで、迷いやすいポイントが簡単に見極められるのである。

 この地図は、京都北山・品谷山周辺のものだ。ここではダンノ峠からソトバ峠に向かうルートを考えてみよう。

ルートから外れた足跡に注目!

 ダンノ峠からP892までは尾根伝いの登りで、難しい場所はなさそうだ。次のP847までも、少し高度を下げながら、コル、尾根伝いと進む。問題はそこから先だ。

▲下りで尾根が分岐する箇所、また登山道が尾根から外れる箇所は、道迷い注意ポイント

 僕が注目したのは、上の2箇所。尾根の分岐である。先述のように、このような場所は道に迷いやすい典型スポットだ。ここでヤマレコの足跡を見てみよう。

▲ヤマレコのWEB版「らくルート」。P847から先を拡大してある。よく見ると、赤丸の箇所に軌跡がある

 僕のにらんだとおり、P847からコルを経て、最初の小ピークから北北西方向に、わずかな軌跡が見られる。ここに何か寄り道スポットがあるのだろうか——いや、「P847からそのまま枝尾根に進んでしまい、途中で引き返してきた」と考えるべきだろう。

 このように、地形図が判読できなくても、ルートから外れた足跡に注目することにより、迷いやすい場所を事前に把握できるのである。

 その先も、登山道は尾根から外れ、いったん谷に下り尾根を乗り換えなければならない。

 が、足跡を見ると、尾根伝いに真っ直ぐ進んでしまっている。地形図にはない道があるのだろうか——いや、やはりオレンジの線がより太い、正規の登山道をゆくべきだろう。ヤマレコの足跡機能で、注意したいのがこの点だ。

足跡があるからといって、自分の力量で歩けるルートかは別問題

 例えば『山と高原地図』では、登山道の難易度が、実線や破線で描き分けられている。他の登山地図も、ルートの難易度が示されたり、難しい箇所には注意書きが添えられたりするものだ。が、ヤマレコの足跡だけを見て、そのルートの難易度を判断することはできないのである。

 足跡があるから大丈夫と油断していると、登攀具が必要な岩や沢にぶち当たり、その場から動けなくなった、なんてことも起こりうるのである。

 最後にもう一例を。

 同じく京都北山・タカノス周辺の地図である。P591からP653.8(タカノス)へと続く、薄いオレンジ色のルートを山岳会で歩く予定だ。線の太さが示すとおり、どうやら入山者が少なく、踏み跡程度の道しかなさそうだ。どこか、危ない場所はないだろうか。

 おやおや? P591から南南東にある小ピークのあたり、怪しげな軌跡があるではないか。本来は東に進むべきなのに、南に入り込んでしまっている。しかも、軌跡がそこそこ濃い。

 もしかしたら、誤ったルートのほうが登山道より踏み跡が明瞭なのかもしれない。よし、ここは注意して進もう。

 ——と、このように、地図とあわせてヤマレコの足跡機能を活用することで、迷いやすそうな場所を事前に確認しておくのである。ヤマレコのダウンロードがまだの人は、今すぐ入手しておこう。備えあれば憂い無し、だ。

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